ついに落水しました。
釣りを始めたときからいつかはやると思っていた。
経緯
沖堤防釣りへ行きました。
今回の遊漁船は、堤防へ対してやや斜めに横付けして、船端から堤防へ飛び移る感じでした。先に上陸した中乗りさんがロープを引っ張って堤防へ寄せてくれてはいるのですが、波が高めでタイミングが難しかったのです。中乗りさんの合図で飛んだものの、タイミングも運動神経も勘も悪く、見事、堤防と船の間に落水しました。
手足・腹・尻などあらゆる箇所の打撲、擦り傷、切り傷で満身創痍です。ただ、おかげさまで大きな怪我には繋がらず何やかんや釣りも楽しみ(!)無事に帰宅することができたため、今後二度と繰り返さないために反省会を開催します。お付き合いください。
不運だったこと・よくなかったこと
初めての沖堤防+高めの波
岸から船、船から岸の飛び移りは普段から乗合い船で経験しているのですが、沖堤防のような上陸用に整備されていない岸への飛び移りは、考えてみると初めてです。初挑戦で波が高めだったのはやや不運でした。
レインブーツ+アイゼンの装備
フェルトスパイクにするか悩んだのですが、事前にフィッティングへ行く時間がなく、手持ちのレインブーツ(長靴)に後付けのアイゼンを選択しました。がこれが失敗。飛び移ったあとに滑らないよう船の甲板でアイゼンを装着したものの、重くて意外と不安定なアイゼンではしっかりと踏み切れませんでした。また、硬い素材のブーツは靴の中で足が泳ぎます。
足にぴったりフィットするスパイクを準備すべきでした。
手袋を外していた
これもまた選択ミスです。今回は防寒テムレスを着用していたのですが、表面の摩擦係数が大きく、手からすっぽ抜けてしまうことが何度かありました。飛び移る際に同じことが起こると嫌だな、と外していたのですがこれが結果的に手指の結構な負傷へ繋がりました。落水時に手指を擦りむいたり切ったり … 手のひらもボロボロですし爪も割れています。また、這い上がる際に指の腹も無数に切りました。
手のサイズに合うグローブなどを準備すべきでした。
そもそも沖堤防って立入禁止では?
ご尤もです…
沖堤防釣りは何十年も前から黙認されており、なぜか渡しの船宿が営業していて立入禁止区間へ案内している、港湾局もときどき注意はするが別に取り締まりはしない、という大変ふしぎな釣り文化なのです。
その沖堤防釣りも今年の四月〜十月にかけた遊漁船業法の改正でついに「実質禁止」となるのですが、まあ … 今のところは文化、慣例としてふんわりとお目溢しをされていて、直ちに犯罪として捕まるようにはなっていません。
ただ、当然釣りのための施設ではなく、整備されているわけではないので、初心者向きではないです。「上陸禁止」のでかい看板が船着場の目印になっているのがちょっとシュールでした。
幸運だったこと・よかったこと
固型式(浮力材入り)のライフジャケットを正しく着用していた
もうほんと、これに尽きます。
というかこれを言いたいがために、この記事を書きました。命の恩人、オーシャンライフさんの BW-2003 型です。船釣りでも使用できるよう桜マーク・Type A です。
磯釣りや堤防釣りでの落水は、岩や貝などへぶつかり穴が開くことが想定されるため、ガスボンベなどで膨張するタイプのライフジャケットは適しません。そのため釣行時の機動性は損なわれますが、首かけ式やベルト式を避けて、浮力材の入ったライフジャケットを着ていました。そして、きちんと自分の体型に合わせて各ベルトを調整し、股下ベルトも横着せずに締めていました。これに命を救われました。
落ちてみてわかったことですが、落水時、浮いている間、引き上げてもらうとき、すべての過程でかなり強く堤防へぶつかります。これは確かに、膨張式では穴も開くでしょう。堤防は人工物ですが、波風に侵食されているので、ほぼ自然の岩と変わらない状態で、フジツボ類など鋭利な貝も一面についています。何度もここへ叩きつけられまくるので、胴体を保護する意味でも絶対に浮力材入りライフジャケットが良いです。
また、落水してすぐに浮力を得られる安心感はとても大きく、冷静さを保つことができました。自動膨張式や手動膨張式は、落水から膨らむまでタイムラグがあるため、その間に首から上へ海水を被ったり飲んでしまうのはきついだろうな、と感じます。なにより、落水時に意識があるとは限りません。
そして、落下や着水の衝撃は思ったよりも強かったので、各ベルト、特に股下ベルトを締めていなければ、せっかくのライフジャケットも脱げていた可能性があります。股下ベルトは擦れるのを嫌ったり、そもそも正しい装着方法を知らず締めていない人が多いかもしれませんが、ここは事前に説明をよく読んで確実に装着すべきだと痛感しました。
骨折しなかった・頭を打たなかった
打撲の痣は一面に作りましたが、這い上がるのに必要な手足を骨折しなかったのは、幸運としか言いようがありません。それくらい強く堤防へ叩きつけられました。頭を打たなかったので、脳震盪や意識喪失もありませんでした。
肋骨など胴回りが無事だったのは、ライフジャケットのおかげです。磯釣り・堤防釣りの場合は、かさばるとか動きづらいとかすべてを無視してでも、絶対に浮力材入りのライフジャケットをおすすめします。
船と堤防の間へ挟まれなかった
これは中乗りさんがロープを調整してくれていたのかもしれませんが、船体が堤防へ寄ってこなかったのも幸運でした。あの状況で数十トンの船が、数十トンの波で押し寄せられてきたら … と思うと、今更ながら震え上がります。
骨折、圧迫による意識喪失、圧死 … 充分にあり得ました。落ちた勢いで船体の下や堤防の隙間へ潜り込まなかったのも、やはり固型式ライフジャケットで、着水時から浮力を得られたおかげです。
満潮だった
満潮、ほぼ潮止まりのタイミングで水位が高かったため、直接引き上げてもらうこともできましたし、波に合わせて這い上がることもできました。後ほど干潮のタイミングで水位を確認しましたが、ここからほぼ垂直な堤防を這い上がるのは、筋力のない自分には不可能でした。
昼間だった+気候が良かった+人が多くいるタイミングだった
今回は夕方便で向かい半夜便で沖上がりだったため、落水時はまだ明るく、自分の状況や這い上がる動線を目で見て把握することができました。気温的にもそんなに寒くなく、落ちてすぐ体温を奪われることなく動けました。また、上陸のタイミングだったため、プロである中乗りさんや他のお客さんにすぐ救出してもらえて本当にありがたかったです。タックルやスマートフォンなどの荷物もすべてロストしたり壊れたりすることなく、一緒に引き上げられました。
これが夜、日も落ちたタイミングで、寒い中ひとりで離れて釣っている時だったら … と思うと本当に怖いです。船が渡してくれる場合は、必ず二人以上が同じ漁場へ渡るよう調整してくれますが、そうではない場合、夜間など危険な状況で、周りに人がいないときは、釣行自体をやめる、というのも必要な判断なのかもしれません。
最低限、後述する落水検知ユニットなどは必須かと思います。
こうして振り返ってみると、「磯釣り・堤防釣りでは固型式ライフジャケットを選択すべし」という先人の教えをしっかりと守ったこと、あとは幸運要素のおかげでいま命があります。
帰宅するまではアドレナリン大放出だったのか、痛みや寒さを全く感じず、沖上がりまでしっかり釣りを楽しみましたが、帰宅してから改めて「え … この状態で釣りを …?」と自身の状態にドン引きしました。首もむちうちで全く動きませんし、手足は血まみれ、全身の筋肉痛でイソメのようにモゾモゾしています。
さて、以降は実際に落ちてみて得られた落水 Tips です。
落水検知ユニットは腹回りへつけたほうが良い
今回は船宿でお借りした JM-Safety の落水検知ユニットを装着していました。ライフジャケットの胸元へぶら下げていたのですが、このあたりだと最初は浮いてしまって殆ど海水へ浸からないんですね(体重やジャケットの浮力にもよりますが)。落ちてから 6 秒以上は水面にいたと思うのですが、落水検知ユニットの電極が濡れなかったので、アラートは飛びませんでした。
夜間など、すぐに気付いてもらいたいときのことを考えると、確実に水へ浸かる腹回りへ装着するのが良さそうです。
引き上げてもらう際は脱力していたほうが良い
救助してくれる人がいる場合は、足をかけたり自力で這い上がろうとせず、恐らくすべてを委ねたほうが良いです。無理に足をかけて登ろうとしたり、もがいたりすると、最悪、救助してくれる人まで落水します。
肩くらいまで引っ張り上げてもらえたら、そこから肩の力で腕 → 足の順に岸にひっかけて、横向きに這い上がるようにするのが良さそうです。
荷物は先に陸へ上げるか早く諦める
今回は満潮で陸が比較的近かったため、荷物類も陸から受け取ってもらえたり自分で放ることができました。自分自身が這い上がるにあたって両手足と全身をフルで使うので、荷物は先に陸へ放るか、潔く諦めたほうが良いです。
人によっては、諦めきれない値段のタックルもあるでしょうが … 命より高いものはありませんので … あのとき荷物を捨てて陸へ上がることを何より優先していたら … なんて後悔はしたくないです。それくらい這い上がれるタイミングは限られていました。
というわけで、様々な人に助けられて無事に生還することができました。首は神経ブロックと電気治療、外傷は処方薬(ゼビアックス油性クリーム)でだいぶよくなりました。打撲した箇所はまだ腫れていますが、そろそろ痛みも取れるかと思います。
救出してくれた中乗りさん・お客さん、絆創膏をくれた皆さん、服を貸してくれたフォロワーさん、救急箱と着替えを届けてくれた船宿のみなさん、本当にありがとうございました。これに懲りず … いやさすがに懲りつつ … 今後は慢心せず釣りを楽しみたいと思います。
生還したあと、平常心を取り戻すために撮った写真
そこそこサイズのメバルも釣れました。
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